純碁 10分で覚えられる囲碁

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王銘琬コラム

純碁のすすめ【後編】 世代交流の最適アイテム


文・王銘琬(日本棋院棋士・九段)

まだまだある囲碁普及の新しい可能性

囲碁界は劇的に活性化できる

王銘琬九段による「純碁のすすめ・後編」 前回は「囲碁は10分で簡単に覚えられ、しかも一局打てる」ことをご紹介しました。碁がすぐ覚えられるのであれば、今までに考えられなかった分野への進出まで可能にします。
 8月に台湾で、一度に250人に純碁を教えました。その舞台は「幸福熟齢」という国際シンポジウム。私のプレゼンの名前は「囲碁で認知症に勝つ」でした。その場で純碁を教え、多くの自治体から問い合わせがあるなど反響がありました。
 “囲碁の学習は認知症の改善につながる”という実験論文が今年発表され、国際的に認められました。健常者に対する予防効果があることも、データで示されました。しかし、認知症治療、予防に囲碁が効果的と分かっていても、これまでは囲碁を覚えること自体が難しいと感じられていました。ところが10分で覚えられるのならば、放っておく手はないでしょう。純碁は、覚えてしまえば一局5分で済みますので、介護の現場で囲碁をサービスのメニューに取り入れることも十分考えられるでしょう。

覚えてすぐ先生に

 健康維持に役立つだけでなく、新しい社交生活も生まれます。すぐ覚えられるということは、即ちすぐ教えられることでもあります。岩手県大船渡市では学童200人に純碁を教え、その子たちがすぐデイサービスで高齢者に囲碁を教えました。こども先生は最強です。だれも身構えることなく、すぐ打ち始めました。介護スタッフまで入ってきて一緒に遊んでいます。
 台湾では入門教室に夫婦、親子、そして孫連れと、たくさんの方が来てくれました。すぐに石をもち、新しい空間と時間を共有できました。世代間交流としても最適なアイテムです。
 学校への囲碁普及は囲碁界の念願ですが、教える人が足りないのが最大の問題でした。純碁ならその心配はなくなります。校長から先生まで、すぐ打てるようにしてあげられるのです。
 台湾トレンド社では、若い社員たちに教えました。すると次の日の昼休みには純碁をあっちこっちで打つ風景が広がり、職場の雰囲気がなごやかになったそうです。会話することが難しい時代になっています。お見合い合コンの初めにまず一局、というようなことも面白いかもしれません。
 純碁を教え始めて驚いたのは、皆さんが碁を覚えたときの喜びようでした。いままで囲碁入門する方は、もともと覚えたい願望を持っていたことでしょう。
 ところが、私が純碁で入門させたのは、自分が囲碁を打てるようになると思ってもみなかった方たちがほとんどです。素直に喜ぶ表情は、私にはとても新鮮なものでした。そして、囲碁は誰もが打てるようになりたいもの、打てなかったのは、打てるように案内できなかったのだと認識しました。
 囲碁は「碁盤にたくさん置いた方が勝ち」という案内の仕方でしたら、誰でもすぐ打てることが証明されました。
 普及の一環に「純碁」を取り入れれば、今後囲碁人口は大きく伸びると期待しています。いま、囲碁は新しい時代を迎えようとしている、そのように思っています。

(『週刊碁』2018年10月15日号) 


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